29th 5 月 2008

映画の著作者は誰?

原作 http://www.copyrightnote.org/crnote/bbs.php?board=2&list=20
原作者 章忠信  2007/9/18完成
訳者 萩原有里 2007/12/09翻訳完成 2007/12/26最終更新

2007年9月14日、東京地方裁判所は、日本の映画監督黒澤明(1910-1998)が1943年から1952年に監督した映画は依然として著作権法の 保護を受けることを認め、被告Cosmo Coordinate社はこれらの映画のDVDを販売してはならず、在庫DVDをすべて回収しなければならないと判決を下した。

また、日本最高裁判所は2007年12月20日、1953年に公開された米国映画「シェーン」の著作権が2003年12月31日に満了し、誰でも自由にそのDVDを発行することができるとの判決を下した。

1971年以前の日本著作権法によれば、映画の著作財産権は著作者の死後38年とされていた。1971年改正著作権法は、映画の公表後50年と改め、2004年1月1日より更に延長され、映画の公表後70年とされた。

東京地方裁判所における争点は、黒澤明が1943年から1952年に監督した映画に対し、どの著作権法を適用するか、誰がこれらの映画の著作者なのかであった。原告東宝及び角川映画は旧法に基づき著作者の死後38年の適用を主張した。被告株式会社コスモ・コーディネートは、映画会社が著作者であり、1971年著作 権法に基づき、著作財産権は映画の公表後50年まで存続するとされ、これらの著作はパブリックドメインに帰属し、如何なる者も自由に利用してもよいことから、 DVDを1枚1000円の価格で販売することは著作権侵害ではないと主張した。

審理経過後、裁判所は黒澤明監督が映画の著作者であり、映画制作当時の著作権法によれば、これらの映画の著作財産権の存続期間は1998年黒澤明の死後38年、即ち2036年にならなければパブリックドメインに帰属しないと判断した。

東京地方裁判所の本件判決の影響は大きく、視聴覚市場に大きな衝撃を与えた。過去、一般人は映画会社こそが著作者で、映画の著作財産権存続期間は公表後50年である と理解していた。従って、日本の巷では早期に制作された映画が数多く出回っており、すでに著作権保護を受けないものと考えられていた。

これより少し前、2007年8月28日、東京地方裁判所においてもチャップリン(Charlie Chaplin)が映画の著作者であり、チャップリンは1977年逝去したため、1919年から1952年の間に制作完成した映画はすべて1971年以前 の著作権法が適用され、その著作財産権は著作者の死後38年、即ち2015年であるとの判決があったばかりである。

この2つの判決が出た後、映画の著作権保護期間を改めて見直す必要があり、そうでなければ著作権侵害を免れ得ないと人々の意識も大転換された。

日本最高裁判所の判決において、米国のパラマウント・ピクチュアズ・コーポレーションは、1953年に公開された「シェーン」は2004年改正著作権法が適用され、公開後70年の著作財産権保護期間を享有し、2023年末まで著作権法の保護を受け、許諾を得ず自由にDVD
を発行してはならないと主張した。但し、日本最高裁判所は、1953年に公開した「シェーン」の著作権は2003年12月31日に満了し、2004年1月1日に発効した改正著作権法による公開から70年の著作財産権保護期間を享有することはできず、パラマウント・ピクチュアズ・コーポレーションは被告が「シェーン」のDVDを発行することを禁止することはできないと判断した。
日本著作権主管機関である文部省文化庁は、「シェーン」の著作財産権は2003年12月31日に満了するが、満了時と2004年1月1日は同一日であり、新旧法律にかかり改正法による公開後70年の著作財産保護期間を享有するとの見解を示していた。このような見解は明らかに無理があり、最高裁判所に受け入れられなかった。
前述の東京地方裁判所は、チャップリンが映画の著作者であると判断し、1971年より前の著作権法が適用され、その著作財産権存続期間は著作者の死後38年としたことから、日本最高裁判所が監督は映画の著作者であるとの見解を受け入れるのであれば、1971年以前の著作権法に基づき、その著作財産権は著作者の死後38年まで存続し、1971年以降の著作権法による公開から50年、又は2004年改正法の公開から70年ではない。

中華民国において、中華民国33年著作権法から映画の著作権の保護が開始され、当時の著作権法第9条第4項及び第11条は、映画は著作者が最初の発行日から起算して10年の著作権を享有すると規定していた。当時は登録主義を採用していたので、登録をしなければ著作権を享有することはできず、中華民国33年の施行細則第12条もまた、映画は本法改正施行前にすでに発行され、本法の改正施行後1年以内に登録を届け出た者はその登録日を最初の発行日と看做す旨規定した。中華民国74年改正著作権法は創作保護主義を採用し、映画は登録がなくとも完成時に保護を受けることができたが、その著作権保護期間は第12条第 1項及び第15条第1項の規定により、完成時より30年とされ、中華民国81年著作権法は更に50年まで延長した。そもそも中華民国74年以前の旧著作権 法は著作権登録をしていない映画は著作権を享有することができず、中華民国74年に創作保護主義が採用された後は、中華民国54年7月10日以降発行されたものでありさえすれば完成時から起算して30年、自動的に保護を受け、中華民国81年改正法を経て、保護期間が未だ満了していないものにあっては、自動 的に50年まで延長された。但し、先の登録がなされ、保護期間が満了しているものに至っては、再び保護を受けない。その他、中華民国91年に中華民国が WTOに加盟した後は、WTOのTRIPs協定の遡及保護原則の要求を遵守しなければならないこととなったので、先の保護を受けたことのない映画はすべて 完成日から50年の遡及保護を受けることができる。

日本の早期の著作権法が著作者の死後38年という計算をもって著作権の保護期間とした立法モデルとは異なり、中華民国著作権法の保護は比較的単純 で、完成日から50年である。現在、1957年1月1日以前に完成した映画は、外国、国内の映画であるかを問わず、すべて保護を受けないという点について争いはない。

映画の著作者の認定については、中華民国著作権法に特別規定はなく、第3条1項第2号において、「著作者とは、著作を創作した者をいう」との一般条項が設 けられているにすぎず、誰が「著作を創作した者」であるかについては、事実認定の問題であり、通常、映画製作会社であり、監督又は俳優ではない。

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